ブランクの作成
@使用するのは25o厚のジェルトン材。比較的カーヴィングしやすい木材です。その反面、ヒノキの様な「硬さ」や「滑らかさ」が無いので、しっかりとした下地を作る必要があります。ただ、ちゃんとした処理をすれば、木面が割れたり裂けたりしにくいルアーを作れるのがこの木の長所です。画像の様なブロック状で製材屋から入ってきますが、ジェルトン材は部位によって比重が0.30〜0.50とバラツキがあるので、計量してから使用します。勿論、適さない物はハジかれるわけですが、製材屋に注文する際、比重までは指定できないので、ロスが大量に出てしまうのが目下の悩みのタネです。
A当ブランドではブランク製作は勿論、その他の作業においても外注は一切使いません(勿論アルバイトも)。これって、今の御時世では結構珍しいことで、特に、ハードウッドをハンドカーヴィングでブランク製作しているルアーブランドはもはや絶滅寸前です。正直、シンドイですが、手首が腱鞘炎になるまでは、ハンドカーヴィングにこだわっていきたいと考えています。
 では、実際にブランクを作っていきます。まずは型紙を用いて、ジェルトン材に型抜き線をトレースします。
B糸ノコ盤を使ってトレース線に沿って切断していきます。線からズレないよう、また切断面が垂直になるよう注意が必要です。垂直にならないと、その後のカーヴィングで苦労します。
C型抜きの終わったところです。ちなみに画像に写っている数が丸一日かけてブランクとして完成させる分です。外注に削ってもらったり、旋盤でブランクを削るのと較べると、劇的に日産は上がりません。非効率極まりないですが、「ハンドメイドルアー」ビルダーとしての意地がここにあります。
Dカーヴィングの際の基準となるセンターラインを引き、型紙を用いてリグ穴の位置をマーキングします(まだリグ穴は空けません)。
Eいよいよボディの成形に入ります。まずは、ポッパーですので、カップを彫ります。ドリルのチャックを変えて徐々にカップを大きく彫っていきます。
F使用するドリルビットは画像の通り。ちなみに、当ブランドで使用している機材に特別な物は何一つありません。どれも普通にホームセンターなどで売っているものです。例えば、一番右の球型砥石は100均ショップで買ったものです。使えそうな道具を探すのもハンドメイドの楽しみですね(^^)
Gいよいよ、ここからがビルダーの腕の見せ所です。基本的には替刃式のカッターナイフ(刃は「特選黒刃」を使用)で成型しますが、エグレた部分がある場合などは小刀を使用します(Jack-O Popperでは出番はありません)。基本的にジェルトンはカーヴィングしやすい部類の木材ですが、刃を入れる角度や方向を誤ると、ゴッソリと余計な部分まで削れる恐れがあるので注意が必要です。
Hまず大きく角を落としてから、頭〜テイルのテーパーを付けて、そして角を徐々に落として丸く削っていきます(画像左→右)。左右対称になるよう、できるだけ平らな面を残さないよう削る必要がありますが、とにかく集中力のいる作業です。昔は一つ削るのに30分位掛かってましたが、今では馴れたもので、10分位で削ってしまいます。
Iカーヴィングの次はサンディングです。サンディングパッドとサンドペーパーで「角」と「面」の連続で構成されている木肌を「曲面」にしていきます。サンディングは誰にでも出来る単純作業だと思われがちですが、実はカーヴィング以上に仕上がりを左右する大事な工程です(仕事柄、アマチュアの作品を見る機会が多いですが、カラーリングは上手いのにサンディングが甘いってケースが結構多いです)。
J強い照明の下で、色んな角度からブランクをチェックしながら、徹底的に曲線を出していきます。コーティングの艶が頭のてっぺんからテイルの先まで途切れない様な曲線を出すには、ここでの繊細なサンディングが必要不可欠です。サンディングはブランクをツルツルにする為にするのではなく、あくまでも「成型」を目的に行います。ですから、ペーパーの番手もせいぜい#240までしか使用しません。
KJack-O Popperの場合、腹のエグレ部分は糸ノコの切断面をそのまま残しています。ノコ刃で出来た凸凹やササクレを円形の砥石を使って滑らかに仕上げます。
Lサンディングが終わったら、ノギスを使ってアイホールを空ける位置を正確にマーキングします(まだアイホールは空けません)。目の位置ってのはかなりシビアで、例えば1oズレただけで、見た目のバランスはかなり悪くなります。後にも出てきますが、当ブランドは「目」には相当こだわっています。
Mようやくブランクの完成です。ちなみに、Jack-O Popperはノーウェイトです。基本的に当ブランドではルアーを開発する時、まずはウェイトを使わずに、リグ位置やブランク形状を調整する事でバランス取り&アクション設定を煮詰めていきます。それで、どうにもならない時にのみウェイトや外付けパーツを使用します(勿論ホンネとして、ウェイトを仕込む工程を省きたいってのもありますが…)。個人的な好みとして、ゴテゴテしたパーツや装飾に頼らずに、シンプルにブランク特性やパッケージングの良さで直球勝負している様なルアーが好きなんです。
N数日かけて、これだけのブランクを用意します。さすがにこれだけ削るとかなりシンドイです。そのうえ、色んなところ(指・手首・背筋・目)が痛くなります。
 とは言うものの、木がサクサク削れていく感触は快感で、何だかんだ言って結構好きな工程です、実は(^^)


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